No.15 リビア勤務時代のエピソード4

 カダフィ政権崩壊後のリビアは治安状態も悪化し、外務省の海外安全ホームページでも、今は最も危険なレベル4「退避勧告」の状況(参考)です。しかし、私の勤務当時は日本人を含め、多くの外国人がビジネスや観光でも滞在していました。当時約350万人の人口のうち、5分の1くらいが外国人(大半が出稼ぎ労働者)と言われていたと記憶しています。
 中近東でビジネスをしていくうえで、知っておくべき「中近東のIBM」という諺があります。それぞれがアラビア語の言葉の頭文字をとった言葉です。Iは「インシャーラ」で、神の思し召しがあれば事は成就する。Bは「ブックラ」、明日の意味で、明日になればなんとかなるさ。Mは「マレーシ」で、(何があっても)気にするな、心配するな。という意味です。遊牧民族ならではの時間感覚や価値観が凝縮された諺です。
 私が勤務していた時の事例でお話しします。
 私の駐在中のある日、勤務しているビルの空調機の具合が悪くなり、修理のためリビア人のテクニシャンを呼びました。二人がかりで暫く空調機を調べていたところ、一人が何と水冷式の配管をボキッと折ってしまったのです。当然ながら、水が噴き出して、あっという間に事務所の中は水浸しです。しかも、彼らは水の止め方がわからず、暫くの間、折れた配管の穴に指を突っ込んで止めようとしていたのです。(オーマイガッ!最初に水を止めてからやれよ!)
 それから、これはリビア国税局の調査を受けた時の話です。当時聞いた話では、国税局員の数も限られ、徴税作業の簡素化のために、外国企業に対するみなし課税制度(企業の事業内容を見て、売上高に対して、数%のみなし利益を決めて課税する方法)が適用されていたようです。そして、数日間の調査を終えて、調査官が言ったのは、「ハードウェア売上部分は2%、ソフトウェア部分は5%だ。よって、全売上高に対して7%のみなし利益だ。」と。(オーマイガッ!小学生でもおかしいと思うだろ!)
 こういった話が毎日のように起こるわけです。もう怒りを通り越して、泣けてくるんです。しかし、中近東で生きていくためには忍耐力が必要なんです。お客とアポイントメントを取っても、会えるかどうかは「インシャーラ(神の思し召しがあれば)」。すっぽかされても、「ブックラ(明日)」。そして次の日に行くと、また「ブックラ」。そして次の日も「ブックラ」。そうか、中近東の「ブックラ」は我々で言うと、1週間後くらいの感覚なんだ!それでだめでも結局「マレーシ(気にするな)」か。