No.20 お墓参り

 先日、義父(妻の父)のお墓参りで茨城に行った。今回は、はるばる四国から妻の姉も参加するとのことで、私と妻との3人で行くことになった。生憎、当日は台風が近づいてきているせいか、小雨がぱらつく肌寒い天候。途中のJRの駅で義姉を拾って、お墓のある場所へ向かう。
 お墓はお寺の境内にあるのだが、普段は無人のお寺なので、寂しい感じがする。彼岸花が境内のあちこちに咲き乱れ、目に映える。
 前回来たのはいつだろう。確か、妻の二人の姉夫婦も一緒だったので、10年以上になるだろうか。
 実は、私は生前の義父に会ったことがない。妻とは社内結婚で、当時は同じ職場だったが、義父は私たち二人が付き合い始める前に、60代前半の若さで亡くなられていたので、会ったことはないのだ。
 しかし、同じ職場で、妻のお父さんが亡くなられた時、なぜか私も非常に気になったのを記憶している。結婚してから妻から聞いたのだが、その日会社で、妻の同僚の女性が、勤務中の妻の後ろに白い服を着た男の人が優しそうに立っていたのが見えた、とのこと。その直後に、病院から妻にお父さんの訃報が届いたとのこと。その同僚の女性は自分でも霊感が強いらしく、何度かそういう経験があったらしい。不思議なことがあるものだ。
 私も、その時に、妻に何か言わなければ、という気持ちが無性にしたことを覚えている。私が妻と付き合い始めたのは、その後からだったのだが、私は義父が妻と引き合わせてくれたものだと、今では思っている。
 さて、お墓廻りを掃除して、お花と線香を立て、仏前に手を合わせる。南無阿弥陀仏・・・・。ふと横の墓誌に目をやると、義父をはじめ、妻方のご先祖様の名前・戒名が刻まれているのに気が付いた。妻や義姉に聞くと、ご先祖様の名前をこうやってまじまじと見るのは初めてだと言う。自分のルーツ再発見といったところか。こうやって、亡くなられた方々の話をすることが、とても供養になるのだと、いつかお寺の説教で聞いたことがあった。とても良い墓参りであった。そぼ降る小雨が、義父の嬉し涙では、と思われた。
 蛇足だが、帰路の高速道で、直前を走っていた乗用車が、居眠りか何かでトンネル側壁に激突した。危ういところで巻き込まれる難を逃れたが、ちょっとのタイミングの差で、どうなったかわからない。これもご先祖様が護ってくださったのではないかという気がしている。
 南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏。