No.21 リビア勤務時代のエピソード5

 リビア駐在(1983年11月~1985年2月)は、現地の資金管理や税務申告など、経理財務の仕事で行っていました。出稼ぎ外国人が多い国で、事務所内にはリビア人をはじめ、インド人、チュニジア人、など約10か国からなる多国籍の従業員がいました。当然ながら、事務所内の共通言語は英語ですが、皆母国語ではないので、それぞれの国の訛りのあるブロークンな英語でした。なので、私も元々英語が得意というわけではなかったのですが、駐在の前後を比べても、英会話力は全く上達しませんでした。
 中東では一般的に仕事は朝が早く、午後は早々に終わって、仲間同士が寄り集まってお茶飲み話に興じたり、家で家事を手伝ったり、という生活様式が多いようです。銀行などは朝7時くらいに始まって、午後1時くらいには閉まっていました。我々の事務所も7時半くらいから始まって、昼休みの2時間で一旦宿舎に戻って昼食を取り、昼寝をした後、また午後出勤していました。
 私の所属部署は財務部門で私が当時30歳前で部門長、部下はスーダン人の会計士O氏(当時30代後半、男)とタイピストのSさん(当時20代後半、女)の二人でした。
 日本ほど毎日残業をするような忙しさではないのですが、休日が金曜日で、日本と時差があるため、何か日本側と電話等で連絡を取り合う場合は、それを考慮して仕事を進める必要がありました。特に月次の財務報告書作成はコンピュータシステム化されていましたが、自分一人で全てやらねばならず、出張者に託送するなど時間がない場合はプレッシャーがありました。システムのプログラム言語はCOBOLでしたが、必要に迫られてプログラム修正など自分で何度かやったのを覚えています。
 また、イスラム社会なので、日本人とはやはり色々と価値観の違うことがあります。例えば、部下のO氏と結婚観について話した時。彼の母国スーダンでは、男は金がないと結婚できない。結婚する時も、相手の親に最初に頭金、その後、何回か分割払いで大金を支払うのだとか。(まるで人身売買ではないか!)
 これは、駐在を終えた後の出張時に途中スイスに立ち寄った時に、UAE出身の当時30歳くらいの若者とナイトツアーで一緒になり、話した時のこと。彼曰く、「イスラムでは、同時に4人の妻を持つことが出来る。そして、生涯では13人までもてる。」と。さらに、「日本人は一人の奥さんで満足なのか?」と。余りにも価値観が違うので、何を反論してもすれ違っていたように思います。
 しかし、私は必ずしもイスラム社会が男尊女卑の社会とは限らないと思っています。それは、イスラムでは、男性が女性をことのほか大事にするという意識が強いからです。例えば、買い物や家事は基本的に男性がやることであり、女性は家でゆっくりさせることが「男の甲斐性」という価値観があるのです。なので、結婚前は女性は皆スマートなのですが、結婚後は例外なくふくよかになります。また、イスラムではぽっちゃりした女性の方が好まれる、ということがあります。昔の日本もそうだったみたいですけどね。(掲載写真はリビア、サブラタのローマ時代の遺跡)