No.32 海外でのエピソード(イラン編)

 イランのラフサンジャニ元大統領の訃報がニュースで伝えられた。イランは私も海外関係の仕事をしていた時代に一度出張で首都テヘランに行ったことがある。1987年頃、今から約30年ほど前のことだ。当時は主に中近東地域の現地プロジェクトや駐在員事務所の税務申告業務の支援で出張することが多かった。
 その時は、成田空港から北京経由でテヘランに行くイラン航空に乗ることになった。機内に搭乗すると乗客の大半はイラン人だ。日本人は私を含めビジネスマンがわずかばかり。しかし、搭乗して30分以上経つのになかなか出発しない。整備員が機内に入り込んで何か作業をやり始めた。床板を外して、下のマシンルームに入り、何やら機材を出し入れしながら無線機で話している。どうやら何か整備不良のようだ。「エンジン交換」などという言葉が聞こえた。嫌な予感がする。以前、イラン航空でヒマラヤ越えができずに不時着(もしくは引き返した?)したという真偽のほどが確かでない噂を聞いたことがあった。それから機内で待つこと4時間、ようやく出発するというアナウンスが流れた。原因について機長からアナウンスがあったどうか、よく覚えていない。離陸の瞬間は機内に緊張が走る。何とか無事に離陸した。ヒマラヤも無事に越えることができ、テヘランに到着した。一体あれは何だったんだろう?
 テヘランでの仕事は順調に終わり、空いた時間を利用してテヘランの街を散策する。当時はまだイラン・イラク戦争が停戦になる前だったが、四六時中戦争状態というわけではなかったので、街中は割と平穏な感じがする。しかし、ミサイルが着弾したと思われるビルの残骸などを見ると、やはり戦時下にあることが改めてわかる。ふと、街角で靴磨き屋が目に留まり、試しにやってもらう。その間、街並みや人通りを眺めながら、色々思いにふけっていると、イラン人の女学生と思しき二人組が歩いてきた。二人ともスタイルがよく美人だ。と、目が合い、二人が私に寄って来た。「Are you a Japanese?」「Yes」「Do you have a wife?」「O..Ofcause」おおっと!これはもしかして逆ナンパ?いや、これはイラン人が外国人と偽装結婚などの方法で海外に出国する一つの手法なのだ。(ということを後から知らされた。)